Sustainabilityサステナビリティ
気候変動への対応 TCFD提言に従って
温室効果ガスによる地球温暖化に警鐘が鳴らされ、2021年のCOP26では、全世界の国々が温室効果ガス排出量の削減目標をコミットして削減活動に取り組むことが決まりましたが、一方で地球温暖化による異常気象は全世界で発生、その頻度は年々増加し、待ったなしの状況となっています。このような状況下、三ツ星ベルトグループの気候変動への対応状況を、TCFD提言に沿った形でご紹介します。
ガバナンス
2022年4月、三ツ星ベルトグループではこの危機的状況に対応するため、社長が委員長を、経営会議メンバーが委員を務めるサステナビリティ推進委員会を新たに設置いたしました。三ツ星ベルトグループで実施する全ての気候変動に関する活動を監視、評価し、必要に応じて指示がなされます。また、その実施内容は、取締役会への報告事項、或いは審議事項となっています。
リスク管理
三ツ星ベルトグループでは、事業における気候関連を含むあらゆるリスクを影響度(大:1億円以上、中:0.3~1億 円、小:0.3億円未満)と発生の可能性(高:1回以上/年、中:1回/2年、低:1回未満/10年)から定量的に評価しています。 年1回、取締役が委員長を務めるリスク管理委員会で気候関連を含むあらゆるリスクを前述の方法で評価し、評価結果と事業環境を考慮して重大リスクを選定、担当部門、対応方針、具体的な施策と実行計画を起案します。事業活動の最終的な責任者である社長、及び取締役会に次ぐ経営執行機関である経営会議のメンバーが参加するマネジメントレビューの場でその提案内容を審議、決定します。 決定内容は担当部門により実行されるとともに、取締役会の報告事項となっています。 実施状況は担当部門の責任者により監視、必要に応じて指示され、有効性を評価した後、年2回、リスク管理委員会に報告、審議が行われ、年1回、この審議内容が前述のマネジメントレビューで報告、審議されます。
この審議の結果は次年度活動方針に展開されるとともに、取締役会の報告事項となっています。
戦略
地球温暖化は気候災害を激甚化し高頻度化させるだけでなく、温室効果ガス排出量削減を目的とした法律、技術、市場、投資等の変化を生み出します。これらの環境変化が三ツ星ベルトグループの事業活動にどのような影響をもたらすのか、リスクと機会の洗い出しを行い、明確にいたしました。
リスクと機会の洗い出しで得られた、気候変動が三ツ星ベルトグループの事業活動に及ぼす影響をより具体的にするため、TCFD提言に従い、地球温暖化の抑制に成功するシナリオ(2℃シナリオ)と失敗するシナリオ(4℃シナリオ)を使い、それぞれのシナリオにおける自然環境、社会環境の変化を具体的に想定し、それらが三ツ星ベルトグループの 事業活動にどのように影響するか、この影響に対してどのように対応すべきかを検討しました。
この結果は‘21中期経営計画の見直しに展開され、気候変動対応としては、燃料のガス化、太陽光発電システム導入等の脱炭素化の推進に30億円、内燃機関の電動化、再エネ設備等の新規市場向けに30億円、それぞれ2023年度までに投資を計画しています。
リスクと機会
関連項目 | 三ツ星ベルトグループのリスク(▼)と機会(△) | |||||
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種類 | 内容 | 内容 | 何に | 大きさ | ||
移行リスク | 現在の 規制 |
四輪車の排気ガス規制に おけるCO2 濃度規制 |
△ | 内燃機関用伝動ベルトの動力伝達効率を改善することで四輪車の燃料消費効率を改善でき、結果として四輪車が排出するCO2量を低減、低炭素製品として売上増加が見込める。 | 売上 | 大 |
▼ | 規制に不合格な四輪車は市場から排除され、その分だけ内燃機関用伝動ベルトの市場が減少する | |||||
将来の 規制 |
CO2排出量に課される 炭素税 |
△ | ライフサイクルにおけるCO2排出量が小さい製品ほど課税額は減少し、価格競争力が増す。 | 利益 売上 |
大 | |
▼ | エネルギー費用の増加によりあらゆる物価が高騰し収益を圧迫する。 | |||||
▼ | 国境炭素価格調整機構によりライフサイクルにおけるCO2排出量の多い製品は国際取引での競争性を失う。 | |||||
技術 | 四輪車の 使用時CO2排出量 |
△ | 内燃機関用伝動ベルトの動力伝達効率を改善することで四輪車の燃料消費効率を改善でき、結果として四輪車が排出するCO2量を低減、低炭素製品として売上増加が見込める。 | 売上 | 大 | |
▼ | 消費者意識の変化、カーボンプライシングの普及により、使用時CO2排出量の多い四輪車は市場から排除され、その分だけ内燃機関用伝動ベルトの市場が減少する。 | |||||
バイオマス 由来の原材料 |
△ | バイオマス由来の原材料を使用した製品は低炭素製品として競争力が増し売上増加が見込める。 | 売上 | 小 | ||
▼ | 調達判断にカーボンプライシングが導入され、CO2排出量の多い製品の需要が減少する。 | |||||
製造時に おける CO2排出量 |
△ | エネルギー消費を抑制した工法開発、低CO2排出量の燃料への転換、燃料の電力置換により低炭素生産を行うことで、カーボンプライシングの影響を小さくし、製品の競争力を向上させる。 | 直接 経費 売上 |
大 | ||
▼ | CO2排出量削減を怠った場合、カーボンプライシングにより製造原価が増加するだけでなく、顧客の需要も減少する。 | |||||
訴訟 | 気候変動に 関連した 法規制の改定 |
△ | 高頻度化する法規制改定に対応した情報収集とグループ内対応の実行は間接経費を要するが信頼性を向上できる。 | 間接 経費信頼性 |
大 | |
▼ | 高頻度化する法規制改定への対応を怠った場合、訴訟リスクが増加し信頼性を失墜する。 | |||||
市場 | 四輪車、 二輪車の 電動化 |
△ | 内燃機関用伝動ベルトから、ステアリング、ドア、ブレーキ、ホイール等の駆動用伝動ベルトへ転換することで、内燃機関用伝動ベルトの売上減少を補う。 | 投資 売上 |
大 | |
▼ | 電動化の普及に伴い四輪車、二輪車の内燃機関用伝動ベルトの市場は減少し、最終ゼロとなる。 | |||||
激甚化、高頻度化する災害対応 | △ | 災害対応事業に関する情報収集と事業への製品・サービス供給体制整備を行うことで遮水シートの売上増加が見込める。 | 投資 売上 |
中 | ||
▼ | 災害対応事業に関する情報収集と事業への製品・サービス供給体制整備を怠った場合、遮水シートのビジネス機会を損失する。 | |||||
風力発電設備の需要拡大 | △ | 風力発電機用伝動ベルトの顧客要求に対応した機能開発と需要増加に対応した生産体制整備により、風力発電機用伝動ベルトの売上増加が見込める。 | 投資 売上 |
中 | ||
▼ | 風力発電機用伝動ベルトの顧客要求に対応した機能開発と需要増加に対応した生産体制整備を怠った場合、風力発電機用伝動ベルトのビジネス機会を喪失する。 | |||||
物理リスク | 気候 災害 |
激甚化、高頻度化する災害対応 | △ | 想定外の気候災害に対応した事業継続計画を、サプライチェーンを含め策定、運営することで、安定した事業活動を実施できる。 | 経営 全般 |
大 |
▼ | 災害対応を疎かにした場合、事業を継続できない事態に陥り、大規模な損害を被る。 | |||||
気候 変動 |
バイオマス由来の原材料供給の不安定化、水資源 の枯渇 |
△ | 合成原材料を使った代替仕様の開発により、安定した原材料供給を得て、製品を安定して供給できる。 | 売上 | 中 | |
△ | 冷却水循環システムを導入することで、渇水時でも安定した生産活動が実施できる。 | |||||
▼ | 天然由来の原材料の供給が不安定になり、顧客への製品供給が滞る。 | |||||
▼ | 渇水時、冷却水が使用できなくなり生産活動が停止する。 |
シナリオ分析
経営環境の変化 | 三ツ星ベルトグループの事業活動 | |||
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2 ℃シナリオ |
2 0 3 0 年 度 |
自然 環境 |
現在より災害が激甚化、高頻度化 | 防災事業を製品とサービスで支援 |
社会活動への影響は現在と変わらず | 事業継続計画の策定、運用、改善 | |||
社会 環境 |
全ての先進国で炭素税導入、 炭素価格10千円 /ton |
燃料ガス化、再エネ電力、燃料の電力置換 | ||
バイオマス原材料の活用 | ||||
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | ||||
電力の再エネ化率50% | 風力発電機用伝動ベルトの供給 | |||
四輪車、二輪車の新車電動化率50% | 非内燃機関用伝動ベルトへの経営資源シフト | |||
エネルギー価格は現在の2倍 | 製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | |||
2 0 5 0 年 度 |
自然 環境 |
現在より災害が激甚化、高頻度化 | 防災事業を製品とサービスで支援 | |
社会 環境 |
全世界で炭素税導入、炭素価格15千円 /ton | 燃料ガス化、再エネ電力、燃料の電力置換 | ||
バイオマス原材料の活用 | ||||
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | ||||
電力の再エネ化率100% | 風力発電機用伝動ベルトの供給 | |||
四輪車、二輪車の新車電動化率100% | 非内燃機関用伝動ベルトへの経営資源シフト | |||
化石燃料価格は現在の3倍超、 電力価格は現在同等 |
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | |||
4 ℃シナリオ |
2 0 3 0 年 度 |
自然 環境 |
現在より災害が激甚化、高頻度化 | 防災事業を製品とサービスで支援 |
災害復興が経済発展を抑制 | 事業継続計画の策定、運用、改善 | |||
収穫量減少、水資源減少 | 天然 /合成互換性製品の開発 | |||
社会 環境 |
一部の先進国で炭素税導入、 炭素価格は足並みがそろわず 1〜15千円 /ton |
燃料ガス化、再エネ電力、燃料の電力置換 | ||
バイオマス原材料の活用 | ||||
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | ||||
電力の再エネ化率30% | 風力発電機用伝動ベルトの供給 | |||
四輪車、二輪車の新車電動化率30% | 非内燃機関用伝動ベルトへの経営資源シフト | |||
エネルギー価格は上がるが影響は小さい | 製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | |||
2 0 5 0 年 度 |
自然 環境 |
現在より災害が激甚化、高頻度化 | 防災事業を製品とサービスで支援 | |
災害復興に手が回らなくなる | 事業継続計画の策定、運用、改善 | |||
収穫量減少、水資源減少 | 天然 /合成互換性製品の開発 | |||
社会 環境 |
全世界で炭素税導入、炭素価格15千円 /ton | 燃料ガス化、再エネ電力、燃料の電力置換 | ||
バイオマス原材料の活用 | ||||
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 | ||||
電力の再エネ化率100% | 風力発電機用伝動ベルトの供給 | |||
四輪車、二輪車の新車電動化率100% | 非内燃機関用伝動ベルトへの経営資源シフト | |||
化石燃料価格は現在の3倍超、 電力価格は現在同等 |
製品仕様、工法、設備改善によるエネルギー効率の改善 |
指標と目標
2020年度、三ツ星ベルトグループは地球温暖化の抑制に貢献するため、中長期のCO2排出量削減目標を定めましたが、2022年度、気候変動への対応に緊急性が増す中、目標の見直しを行いました。日本国内8拠点でのCO2 排出量に対する 目標となっていますが、今後、グループ全体の目標を策定してまいります。
また、現状、CO2 排出量の集計は、Scope1とScope2にとどまっていますが、Scope3の集計方法の検討を始めており、 2023年度から集計を開始する予定です。
CO2 排出量削減目標
2023年度 2013年度比22%以上
2025年度 2013年度比27%
2030年度 2013年度比46%
2050年度 カーボンニュートラル
2050年度カーボンニュートラルに向けて
2030年度の目標は、燃料を重油からガスに切り換え、消費電力を全て再エネ化することで達成することが見込めます。
2030年度以降は「燃料のカーボンオフセット」「脱炭素エネルギーへの切換」が重要なキーとなっています。